Volume01.2014 Number.01

スタイルノルウェー創刊にあたって

トロルトゥンガノルウェー南部の街オッダにある「トロルトゥンガ」。フォルゲフォンナ氷河を背にしたこの絶景スポットを巡るには、地元観光協会が主催するハイキングツアーに参加するのが一般的だ。所要時間は8~10時間ほど。ノルウェーに古くから伝わる妖精トロルの舌に、その形状が似ていることからトロルトゥンガと呼ばれるようになった。柵などの安全対策がなされていないので注意が必要だが、断崖絶壁の先端に腰かけたり、逆立ちをする強者もそこかしこに見かける。

KingdomofNorway──日本人が「ノルウェー」と呼ぶこの国のことを、皆さんはどれぐらいご存知だろうか。とっさに思い浮かぶのはサーモン、フィヨルド、オーロラぐらいなもので、すぐに正直言葉に詰まる。北欧においてもっとも“影の薄い”国かもしれない。
私たちは、『スタイルノルウェー』を再創刊するにあたり、飾らないノルウェーの自然や人々の生活を伝え、皆さんに身近なノルウェーを感じてもらいたいと思った。多くの人はノルウェーについてほとんど知らないし、いったいどれほどの人が将来ノルウェーと交わる機会を得られるだろう。私たちが伝えるノルウェーのライフスタイル情報が、皆さんに新鮮な発見と驚きをもってノルウェーを少しでも知る契機になれば、そんな思いでStyleNORWAYをお届けしたい。
たとえばノルウェーの基幹産業に水産業がある。かつては乱獲から漁獲量が激減したが、国民が危機感を共有し強固な資源管理を導入した。また一方ではサーモンの養殖技術の発展を国が主導した。乱獲という間違いはあったが、真摯に反省したおかげで現在は世界第二位の水産物輸出大国となり、漁業や水産業は高所得の産業となった。
振り返って日本の漁業は、タフな労働、資源の減少、従事者の高齢化、低所得など、大変厳しい状況にある。東日本大震災の後、宮城県の漁業者がベルゲン近郊のサーモン養殖場と近代的な漁船を訪れた。前述の資源管理への取り組みに始まり、養殖産業の環境への配慮、徹底的に省力化されたサーモン加工場、乗組員の健康に配慮した漁船など、日本式と異なる多くのことを学んでいったという。
ダイバーシティ(多様性)の観点でいうと、男女共同参画社会を掲げるノルウェーでは、大企業や官公庁の役員は1/4が女性でなくてはならない。「クオータ制」と呼ばれるこの制度を導入したのは2006年のこと。ようやくここにきて「女性が輝く社会を」と掲げ始めた我が国には、ノルウェーの経験から学ぶことは少なくないはずだ。
ここ数年、多様性という言葉をよく耳にする。だか果たして私たちはこの言葉が表す意味をきちんと理解しているだろうか。ジェンダー、雇用についても、多様性への「取り組み」をはじめただけで、問題を解決したかのごとく錯覚させてられてしまう。私たちより遥かに先を歩んでいるノルウェーでさえ、多様性への取り組みは試行錯誤の連続だというのに。
私たちは取材を通して、日本とノルウェー両国の多様な背景や習慣、考え方を紹介していきたい。そんな中にお互いに共感すること、感心するようなことがある。しかし中には違和感を感じることもあるだろう。StyleNORWAYを読み進めた時に「なぜ?」と感じたら、それこそ私たちが伝えたい「多様性」だ。
異国に行き、現地の習慣などで自分が理解できないことや受け入れ難いことに遭遇したとき、一般にこれを「カルチャーショック」と言う。カルチャーショックも自身に直接的被害が及ばない限りは楽しい経験だ。StyleNORWAY読者の皆さんが安全なカルチャーショックを感じてくれたら、それは私たちの喜びだ。