Volume01.2014 Number.05

薪ストーブが欲しい![株式会社トコナメエプコス]

ノルウェー人にとって、薪ストーブは暮らしに欠かない必須アイテムだ。
北欧の厳しい寒さに耐えられる技術を融合したハンドメイドの製品であり、家族が集まって語らう「場」に、なくてはならない温もりをくれる。

私が人生で初めて会ったノルウェー人は、本誌編集長のミカールである。普段は物静かで、笑顔を絶やさず、まわりの人を和ませてくれるが、琴線に触れる話題になったとたんに熱く語る。 「薪ストーブ」もその一つだったらしい。冬場の暖の取り方の話になったとき、突然「ノルウェー人の心の中には薪ストーブがあるんですっ!」と力説された。そこまで言うならと、JOTUL(ヨツール)の薪ストーブが展示してあるトコナメエプコス恵比寿ショールームに向かった。
こちらのショールームには、クラシックラインからモダンラインのヨツール製品がさまざま並んでいる。残念ながら薪に火はついていなかったが、その存在感は十分に伝わってきた。懐かしさを感じる鋳物製で、シンプルなデザインがとにかくクール。暖房器具だが、とびきりクール。自分の部屋にあったらなどと想像すると、無性に衝動買いしたくなる。
ヨツールの担当者によれば、薪ストーブは意外にも東京をはじめとした日本全国に普及しているそうだ。てっきり別荘やレストランといった特別な場所に据え付ける人が多いのだろうと思っていたが、最近では30~40代の若い世代からの問い合わせも多く、日本全国で年間1万台ほどの薪ストーブが出荷されている。そしてニーズは確実に高まっているとのこと。
ただし、新築一軒家を建てる場合、「案としては出るけれどコストダウンのために真っ先に削られるのは薪ストーブ」、というアンケート結果もある。やはりまだ贅沢品、嗜好品というむきが強そうだ。
薪ストーブを使ったことがない方も多いはず。だから分からないことも多い。薪はどこで手に入れる?煙突の掃除は?屋内に煙が入ってくることはないのか?心配事を考え始めればキリがない。それでも薪ストーブユーザーが増えているのには、どんな背景があるのだろう。
現在の日本は、テレビやインターネットが普及し、家族と一緒に時間を過ごすことが少なくなってきている。家族の絆を一番に掲げていた日本人の意識もずいぶん変わってきているその一方で、仕事は大切だが家族と過ごす時間を一日数時間でいいので作りたい、そういった「場」が必要と考える人が増えている。
そこで有効なのが「火」である。火がある場所に人は自然と集まってくる。もはや人の習性だろう。火を眺めながら話をしたり食事をしたりという「時間と空間」を買うと思えば、手間とされる作業も苦ではなくなるかもしれない。作業は家族で分担して……うん、いい考えだ。
そもそも、なぜノルウェー人は薪ストーブを使うのだろう。一年の半分が冬ということもあるが、どうやらその根本には、ノルウェーならではの「KOSELIG(コーセリ)」という考え方があるようだ。これは「心地よく暮らす」という意味の言葉であり、健康をなによりも重んじ、環境に対する意識が高いノルウェー人ならでは。
冬になると日照時間が限られるノルウェー人にとって、本物の火はありがたい存在なのだろう。家族を照らす暖かな光を、火に求めているのだろう。

[ History ]「JOTUL(ヨツール)」は、1853年にオールフ・A・オンスムにより創業された。スカンジナビアンストーブの技術を注ぎ、現在では世界40カ国以上に輸出される企業に成長した。本社はオスロの南、スウェーデンとの国境にほど近いフレドリクスタッドにあり、鋳物の製造から組み立てまで一貫して行われている。鋳物製のストーブは、耐久性や蓄熱性が高く、シンプルで機能的なデザイン性を重視するために選ばれた素材だ。数多くの工業デザイン賞を受賞する製品には、モダンラインとクラシックラインがあり、インテリアとしても部屋に馴染みやすいデザインが採用されている。また、環境にも十分配慮されており、工場の電力は水力発電でまかなわれ、排水や廃棄物も無害化処理する「完全閉鎖システム」によって管理されている。鋳鉄は鉄道などのリサイクル品を活用して、少ないパーツで構成されている。
ご紹介する「JOTUL F 163」は、ヨツール名品No.1やNo.4を継承するしっかりした3本脚が特徴。正面のガラス扉のほかに側面にガラスをはめ込み、炎を立体的に演出できる。すすが付着しにくい空気の流れと、クリーンバーン(自動二次燃焼システム)から生まれる美しい炎から、「炎のインテリア」としても高い評価を得ている。