Volume01.2014 Number.10

一軒のカフェが、街を変えた。FUGLENの軌跡が、日本を変える。[FUGLEN]

オスロの人気カフェ「FUGLEN(フグレン)」は、ノルウェーのカフェ文化を変え、新たなライフスタイルを生み出したマイルストーン的な存在といえる。世界を見渡しても独特かつ突出したノルウェーカフェ文化の申し子である彼らが、オスロに続く2号店に選んだ場所はここ東京だった。
欧州でもアメリカでもない、遠く離れた極東の島国に出店しただけでも十分に驚くが、出店場所に選んだのは渋谷区富ヶ谷。渋谷駅から徒歩20分、原宿からも同じぐらい。千代田線の代々木上原が最寄り駅となるが、それでも早足で10分弱かかる。立地的に恵まれているとはお世辞にもいえないこの場所に「FUGLENTOKYO」を出店したのには、どのような戦略があったのだろう。
「戦略というほど大げさなものはありませんよ。フグレンが富ヶ谷のあの場所を選んだのは、サイズ、立地、雰囲気が全て理想的だったからです。都会でありながらも喧噪から少し離れ、緑が近くにあるという条件もオスロと似ています。また、建物のオーナーとのプライベートなつながりが合ったというのもあります。2012年のオープン以来、地域の方々の生活に自然に溶け込んでいくのに、そう時間はかかりませんでした」(オーナーペッペ・トルルセン氏)
お店のまわりには日本でいう縁側のようなイスが置かれ、カフェに入らない通りすがりの人でも気軽に座ることができる。店内中央の大きな丸テーブルで仕事をしていると、クリエイターらしき若者、子連れ家族やカップルがやってきて、少しの時間、その場の空気を共有することになった。気づけばビジネスパートナーに発展するかも?子ども同士がいつの間にか仲良く?ありえないことかもしれないが、ありえないことが起こるかもしれないと、期待させる何かがFUGLENにはある。
店内の家具や雑貨は、1950~75年頃に製作されたノルウェーのヴィンテージものやリプロダクト品だ。他の北欧諸国のしつらえと比べて、複雑で深みのある色合い・空気感に完全に魅了された。
店内はWi-Fi環境も充実している。スタッフに聞けばパスワードを教えてもらえるので、ノマド生活の拠点に利用する人も多いそうだ。となると長居の相棒として欠かせないのが美味しいコーヒーだろう。お店からわずか1km、同じ渋谷区の神南にコーヒー豆をローストする焙煎所を自前で設けている。
そこでFUGLENTOKYOのマネージャーである小島賢治氏に会うことができた。バリスタ世界チャンピオンのコンセプトカフェ、ポール・バセット新宿店で2年間修行を積んだ後、ノルウェーにわたりFUGLENでバリスタ修行をしたという小島氏。早い段階からFUGLENが東京に進出することを知っていたそうだが、まさか自分がマネージャーになるとは思ってもいなかったそう。
「ノルウェー人と日本人って、根底にある部分がすごく似てると思います。礼儀正しくて仲間思いでちょっぴりシャイ。寛容で心優しいんですよね。そんな空気感をサービス面でも反映させたくて、FUGLENTOKYOは食べ物の持ち込みをOKにしました。オスロのFUGLENの隣には寿司店があって、寿司ロールをかじりながら学生がコーヒーを飲んでるなんて姿が見られます。ひと言でいうと自由なんですね。そんなスタイルを東京でも魅せたいと思いました」(マネージャー小島賢治氏)
『ノルディック・バイ・ネイチャー2014』で出会ったMONOCLEの編集者が、「FUGLENTOKYOは富ヶ谷を変えた!」とアツく語っていた。人と人が偶然に出会う「場」があり、「つながり」によって創造が生まれる。FUGLENの軌跡はこれからの日本を豊かに変えていくヒントが隠されているのではないかと私は感じる。日本の地域が抱えている課題を解決する糸口が、「コミュニティの作り方」にあるのではないかと考えているからだ。偶然のつながりから、また一つ新しい奇跡が生まれる日もそう遠くないだろう。


グランドハイアット東京のOAK DOORで行われた『ノルディック・バイ・ネイチャー 2014』は、リニアアクアヴィットのメーカーであるアルカス社が主催した『リニアアワード2014』の優勝者オスカー・ヨハンソン氏のカクテルと、クリスチャン・ペターソン氏の料理を楽しむイベントだった。OAK DOORのプライベートダイニングルームには、空間プロデュースとしてFUGLENが携わり、Norwegian Iconsのスタイリッシュな家具で飾られた。FUGLENの共同オーナーの一人でもあるハルヴォル・ディーゲネス氏も来日し、カクテルをサポート。当日はノルウェー王国大使夫妻も出席され、両国の文化的融合を感じる一夜だった。


FUGLENが仕掛けるもう一つの事業が、NOREWEGIAN ICONS(ノルウェージャン・ アイコンズ)だ。このプロジェクトでは、1940~75年のミッドセンチュリー期に活躍したデザイナーズ家具、ガラス製品、陶磁器、アートなどを紹介、販売している。東京で開催されたIFFT 2014(インテリア・ライフスタイル・リビング)にも出展し、ヴィンテージやリプロダクト製品だけでなく、若手デザイナー29人が所属する「Klubben(クルベン)」の作品も紹介してくれた。FUGLEN TOKYOも会場内にブースを出展し、ノルウェースタイルのカフェやオープンサンドを販売していた。ノルウェーのクリエイティブを楽しめる一日だった。