Volume01.2014 Number.12

ノルウェーの映画とミステリー &あとがき[インフォメーション]

北欧映画祭「トーキョーノーザンライツフェスティバル」
開催4年目を迎え、注目されつつあるノルウェー映画[ノルウェーの映画]

トーキョーノーザンライツフェスティバルは、北欧映画作品をセレクトした映画のイベントだ。『北欧映画の一週間』をコンセプトに掲げ、毎冬、渋谷円山町のユーロスペースを一週間借り切って開催されている。同フェスティバル事務局の細川典子さんに伺った。
「2011 年に始まり今年で5回。年を追うごとに参加者や上映作品数も増えています。おかげさまで来年の開催も決まりました」聞けば同フェスティバルの発端は北欧ではなくオランダだったそうだ。オランダ映画というニッチな文化を紹介するイベントを、映画祭という形でやりたかった笠原氏が、人脈をたどるうちにノルウェー大使館員と知り合ったことで、他の北欧諸国の大使館を巻き込んで開催にこぎつけたという。
「映画を通して文化や歴史を学び、そこで得たものを共通言語として関係各位に話を聞いてまわりました。見識が深まるにつれて人脈が広がり、このような一つのモデルにできたのは純粋にうれしいです」
ノルウェー映画といえば……ピンとくる人がどれだけいるだろうか。ノルウェー国内で有名な作品でいうと、ベント・ハーメル監督の『キッチン・ストーリー』や『ホルテンさんのはじめての冒険』にはじまり、バラエティに富んだ多くの作品がある。北欧神話をベースにした冒険アクションの『ラグナロク』(ミケル・ブレネ・サンデモーセ監督)や、カーリングを題材にした『キングカーリング』(オーレ・エンドレセン監督)などのコメディ。ミステリーではオスロ出身のポール・シュレットアウネ監督が有名だ。『隣人 ネクストドア』や『チャイルドコール』といった代表作にはハリウッドからのオファーも届いている。

若手監督の中でもっとも注目されているのがヨアキム・トリアー監督だろう。『オスロ、8月31日』は、アメリカの映画批評ランキングの9位にランクされた。ノルウェーの映画文化は国境を越え、世界に広がりつつある。
そしてまた北欧の映画製作の特徴は「合作」にある。北欧諸国の人口は各国500~1000万人と、マーケットとして非常に小さい。大作映画を製作しても採算がとれないため、欧州全体を市場ととらえ、各国が出資することで“映画文化圏”を形成しているのだ。
最後にノルウェー映画で一番面白い映画は? と聞いたところ、『ピンチクリフ・グランプリ』(イヴォ・カプリノ監督)を薦めてもらった。
「人形が主人公のアニメーション映画です。ノルウェー人なら誰もが知っている人気作品で、来年のトーキョーノーザンライツフェスティバルに新作が登場します。それまでにぜひチェックしてほしいですね」
本誌では次号以降も、ノルウェーの映画や音楽の情報を発信していく。今回の細川さんへの取材で、ノルウェーにはまだまだ知らないカルチャーがあるという手応えをつかんだ。


あるがままの現実が、スリリングで刺激的
リアルを主軸に置いた作品が北欧小説の特徴[ノルウェーのミステリー]

北欧の小説は、作者の現実に即した内容のものが多い。舞台を海外に移すことはあっても、やはり自分を中心とした出来事を語る。それが女性視点で語られることで、新たなカテゴリーとして成立しているのをご存知だろうか。
北欧では、ワークライフバランスという社会通念が機能しており、職場の上司が女性だったり、父親が積極的に子育てするのは当たり前のことになっている。そのような現実を通して、いまある社会情勢を浮き彫りにしていく──このような基本構造の北欧ミステリーが増えている。
しかしそれは作品にリアリティをもたらすための手法であり、ストーリーを度外視するわけでも、社会的なプロパガンダでもない。主人公に起こる現実をあるがままに表現することで読者との距離を縮め、多くのファンの共感を生んでいるのだ。言うなれば現実世界で起こっている事件の方がよほど非現実的であろう。
北欧の小説家は、自分の生まれた環境を受け入れ、思うがままに表現すると、新しいコンテンツとして社会が受け入れてくれることを知っている。「北欧」という言葉から想起される、福祉国家や男女差別のないクリーンな社会というイメージを追い求めるのでなく、虐待、アルコール依存、移民差別といった「現実」「日常」を表現することの方が当たり前であり、なおかつスリリングなのだ。
今回のイベントでスタイルノルウェー編集部が注目したのは、北欧小説を翻訳する方たちの存在だ。言語が異なる小説を、内容だけでなく文化的背景を含めて日本人に伝えるのは、想像をはるかに超える努力が必要だろう。ある意味、作家と同レベルの苦労や貢献がうかがえる。それほど言葉というものはズレを生み、とらえ方次第で誤解を招く危険性を秘めている。
情報の正誤をつかみ、文字を介して人に伝えるとはなんと難しいことか!「出来上がった翻訳本の厚みが国によって全然違う。いったい何が起きてるの!?言語が違うことで200ページも誤差が生まれるなんて同じ物語とは思えないわよね」と茶目っ気たっぷりの口調で語っていたレックバリ氏。
文化の異なる言葉を翻訳することで生じるニュアンスの違いは、北欧だけでも一括りにできないのだから、ましてや日本の言語に翻訳するのはとてつもない作業だろう。
北欧で市民権を得ている日本文学は、一握りの作家の作品に限られる。若い世代では、小説よりもアニメやコミックが主流だ。こうした文化的な交流から、日本を舞台とした北欧小説が生まれることを期待する。文学とは、直接現地に行かなくても見識を得ることができる“旅”の一つなのだから。

北欧ミステリーフェス2014

2014年11月22日(土)に開催された『北欧ミステリー・フェス2014』は、ミステリー作家のレーナ・レヘトライネン(フィンランド)とカミラ・レックバリ(スウェーデン)をゲストに迎え、北欧ミステリー文学に関心のあるファンを立教大学池袋キャンパスに集め行われた。3部構成のイベントになっており、北欧文学の翻訳家である柳沢由実子、ヘレンハルメ美穂、古市真由美の3人による鼎談や、日本の警察小説の第一人者、堂場瞬一氏によるスウェーデンレポートなど4時間30分に及ぶイベントだった。司会を務めるのは犯罪小説の評論家でもある杉江松恋氏。北欧とは、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、フィンランドの5か国を指す。最近では、映画『ミレニアム』シリーズの大ヒット作により、ノルディック・ノワールの世界観は浸透しつつある。

共催:北欧5カ国の大使館、集英社、東京創元社、立教大学


創刊します!
ノルウェーと日本をつなげるライフスタイル情報誌!![あとがき]

Hyggelig å møte deg!
初めまして!新創刊にあたってStyleNORWAY編集長を務めますミカール・ルイス・ベルグです。
この度、ノルウェーのライフスタイルを紹介するStyleNORWAYのリニューアルを機に、在日ノルウェー商工会議所から発刊させていただくことになりました。
新創刊にあたり、これまで以上のマガジンとして発展するよう、全力で取組んでまいります。フレッシュな内容とデザインで、改めて読者の皆様にノルウェーのライフスタイルについての最新情報とトレンドを、沢山紹介させていただきますのでご期待ください。
2015年にはアクティブなウェブサイトを発表し、日本の中の「ノルウェー」というコミュニティー作りを応援してまいります。あわせてイベント企画なども行っていきます。皆様には今後とも是非StyleNORWAYを手に取り、新しく編集製作に加わった額賀剛治と一緒にノルウェーをお楽しみください!

ミカール・ルイス・ベルグ編集長

在日ノルウェー商工会議所
専務理事

1981年にノルウェーのオーレスン市出身。ノルウェー人と日本人のハーフです。フィヨルドと山に囲まれてノルウェーで育ち、26 歳のとき来日しました。1 年間上智大学で日本語を学ぶ予定だった私は、日本の魅力に惚れ、日本滞在8 年目です。 現在は在日ノルウェー商工会議所の専務理事としてノルウェーと日本・ノルウェー関連企業のビジネスをサポートさせていただいています。二つの母国を持つ私にとってこの職に就くことができて、幸せです。


    Staff

  • StyleNORWAY スタイルノルウェー
    Volume 01 2014

    発行人:在日ノルウェー商工会議所
    編集長:ミカール・ルイス・ベルグ
    編集制作:額賀剛治
    テキスト&校正:筒井健二
    デザイン:六車ひかり
    プロダクトマネージメント:株式会社シー・アール・エム
    協力:駐日ノルウェー王国大使館通商技術部

    在日ノルウェー商工会議所
    〒106-0047 東京都港区南麻布5-12-2/03-3440-9935
    www.nccj.or.jp