Volume02.2015 Number.02

ノルウェー船の歴史 〜ヴァイキングと探検家〜[船舶]

ノルウェーの海史をひもとくと、西暦800〜1000年頃が最盛期だったようだ。その主役はご存知「ヴァイキング」。長い航海に耐え、操舵性の高さとスピードが自慢の特殊船を自在に操り、内海・外海を問わず、世界はせましと海に繰り出した。
一般的にヴァイキングというと「海賊」、つまり他の船から金品や物資を強奪する恐ろしい存在といったイメージがある。その点については完全に否定するものではないが、海賊とは優れた船乗りであり、同時に交易商人、工芸家、探検家でもあった。初めてアメリカ大陸に到達したのもコロンブスではなく、ヴァイキング船に乗った北欧のヴァイキングだというから、その冒険心・探検心は計り知れない。
当時のヴァイキングが主船としていたのは「ロングシップ」と呼ばれる船である。細く長い形状と木製のボディで徹底的な軽量化を図っていたのが特徴だ。これは言うまでもなく、積載性よりも海上での速度や取り回しを優先させていたつくりである。また、吃水が浅いため、水深が数メートルの場所でも航海できるロングシップは、海から砂浜に乗り上げて海沿いの集落を一気に襲うのに適していた。まさにヴァイキングのための船といっても過言ではない。また、船体の軽さも武器となった。陸路を輸送する際、森の中を担いでいくことも可能だったそうだ。
美しいフォルムも見逃せない。前後左右がシンメトリー形状となっており、前進・後退、左右へのアプローチが素早く行えた。そしてほぼ全長に渡ってオールが取り付けられ、長い航海における漕ぎ手の労を減らす役割を果たしていた。首都オスロには「ヴァイキング船博物館」があり、実際のヴァイキング船が展示されている。是非一度実際の迫力を感じていただきたい。
ヴァイキング船の他にも高名な船がノルウェーにはある。「コンティキ号」という船をご存知だろうか?現代ノルウェーでもっとも著名な探検家トール・ヘイエルダールが自ら舵を取り、南太平洋を横断してポリネシア人のルーツを証明するために作った1隻である。

形状としては船というより“いかだ”に近いかもしれない。全長15m、幅は7.5mほどで、中央には小屋もある。軽くて強度のあるバルサ材の丸太で土台を組み、その他は竹、松、麻、バナナの葉などで作られた、非常に“原始的な船”である。古代の人々がどのように太平洋を渡ることができたのかを体験するため、当時の船を再現して海に挑んだのだ。コンティキ号の実物は、オスロにあるコンティキミュージアムで見ることができる。
冒険は言うまでもなく壮絶なものだった。その中で重要だったのは、計画どおりに海流と貿易風に乗るための操舵である。刻一刻と表情を変える海で、舵取りに慣れるまでは苦難の連続だったという。航海記によれば、サメやマッコウクジラの群れに遭遇するなど、緊張感が途切れることがなかったようだ。大海に浮かぶ1隻のいかだ──これはまさに大海における1枚の木の葉に近しい。
そしてまた船に関する心配事もつきなかった。水を吸う性質を持つバルサ材を使用しているが本当に大丈夫なのか?丸太を結び合わせている綱は摩擦で擦り切れてしまわないか……?
だがこれらの心配は時間とともに少しずつ薄れていった。バルサ材が水を吸うのは最初だけで、やがて樹液によって浸透しなくなる。丸太をつないでいた網もやわらかいバルサ材に食い込んで頑強になっていった。古代の人々の知恵が正しい証明となったのだ。こうして約3カ月の航海の末、コンティキ号はポリネシア諸島に辿り着く──。
ヴァイキングや探検家、冒険家や交易商人が大きな野心とともに海に出た。実に多くの船が海に生き、そして消えた。海の歴史は彼らの勇気と情熱によって創り出されてきたのだ。船、それはロマンと真理の生き証人といえる。