Volume02.2015 Number.07

海洋国家ノルウェーのシンボルも
生活をデザインする薪ストーブ[トコナメエプコス]

親から子へ、そして孫へと受け継がれる世代を越えたものづくりに、創業から160年以上にわたって取り組んできたヨツール。
薪ストーブの製造段階から環境に配慮するエコロジカルな姿勢は、“クラシックからモダンへ”といったように時代の変遷とともに進化するユーザーのライフデザインによって紡がれている。

実に40カ国以上のユーザーに愛され、世界有数の薪ストーブメーカーに成長した「JOTUL(ヨツール)」の歴史は1853年に始まった。1920年代の世界恐慌、70年代のオイルショック、2000年代に突入後の経済不況など、うねり続ける世界情勢を鑑みつつ、同社には創業から160年以上変わらぬものがある。それが環境への配慮とプロダクトデザインへの想いだ。
ヨツールの製造工場の電力はすべて水力発電でまかなわれ、工場内は外部に排水や廃棄物を出さない完全閉鎖システムを採用している。暖炉・薪ストーブメーカーとしては世界で初めてのISO認定工場に指定された。また、製造された薪ストーブももとを正せば鉄。リサイクルが可能な素材である。つまり、製品の製造段階においても、使用するときも、ヨツールの製品は「自然との共生」というテーマのもとで、徹底した環境配慮を行っているのだ。
「寿命の長い製品で、世代を問わずみんなに愛される製品を」という基本理念を貫いているヨツール製品が、世界中のユーザーから評価されているのにはもう一つ理由がある。プロダクトデザインだ。
ヨツール製品に用意されているのは、「モダンライン」と「クラシックライン」の2種類。ユーザーのライフスタイルに合わせてデザインを選択でき、インテリアとしても部屋に馴染みやすいデザインが採用されている。
そうした造形の美しさが評価され、2007年には世界的デザインアワードの一つである「reddot(レッドドット)」のプロダクトデザイン賞のベスト・オブ・ザ・ベストを受賞した。薪ストーブで同賞を受賞したのは初めてのことである。
また、ヨツールの考える“よい製品・よいデザイン”とは、フォルム・機能性・耐久性を兼ね備えただけでなく、高いメンテナンス性を持ったプロダクトのことを指す。造形の美しさと機能性を両立させると同時に、壊れにくいヨツールの薪ストーブを構成する部材は非常に少なく、万が一トラブルやメンテナンスを必要とするところがあっても、修理に手間がかからない。
ヨツールのストーブの想いは、その文様・意匠からも汲み取ることができる。ノルウェー王国の紋章はもちろん、フィヨルドや海図、羅針盤や船といった、海に囲まれた海洋国家ならではの文様や、コウノトリの絵を通じて新たな生命の誕生を喜ぶなど、ただの暖房器具・ツールではなく意匠やデザインにこだわっている。命を、そして暮らしを見守る想いがこめられているのだ。
ノルウェーには、「住宅には必ず煙突をつけておくこと」という条例がある。ノルウェーの家庭のエネルギーの主力は日本と同じで電力である。ただし、冬季に極寒を迎えるノルウェーでは、もしも風雪や倒木で電線が切れたらそれこそ生命に関わる問題だ。そこで薪ストーブがあれば、当座の暖を確保できる。そのため、新しい薪ストーブに買い換える場合、状況や条件に応じて国から助成金が出るそうだ。まさに国を代表するプロダクトといえよう。
薪ストーブの輸送には時間がかかり、大体2カ月半ほど。年間出荷数はおよそ2000台である。日本における新築戸建ての着工軒数は年間約80万軒。そのうち薪ストーブを付けるのが1万軒というのでまだまだ割合としては少ないものの、着実にその数を増やしている。
編集部が取材に訪れたとき、薪ストーブに火を入れてもらった。少しずつ、本当に少しずつ空間が温まるまで、しばし雑談を交わす。炎のゆらぎ、薪のはぜる音、木材が燃えるほのかな香り。五感で触れるこうした温もりが薪ストーブの魅力だろうか。時間に追われる日々の中で、薪ストーブを中心に据えて生活をデザインする──そんなライフスタイルが日本で確立される日も近いかもしれない。

<お問い合わせ>
株式会社トコナメエプコス 恵比寿ショールーム
03-6418-4822
http://jotul.co.jp