Volume03.2015 Number.07

Diversity[ノルウェーのダイバーシティ]

ノルウェーに学ぶ親の離婚と子どもの成長

夫婦関係を見つめなおしたとき、数ある選択肢から「離婚」を選ぶ夫婦が日本で増えているという。
そこで今回、「離婚がおよぼす子どもと家族への影響」を研究テーマに掲げ、今年2月に視察旅行でノルウェーを訪問した2名の教授に本誌編集長ミカールがお話を伺った。
子どもを守り、子どもを中心に据えた“ノルウェーの離婚”から、私たちが学べることは多いはずだ。

──「離婚と子育て」「離婚後の面会交流」といったように、近しいテーマの研究に取り組まれているお二人が、今回視察先にノルウェーを選ばれたのはなぜですか?

野口さん(以下、敬称略):子どもの親権が法律で保証されているなど、社会保障制度が非常に充実しているのは知っていましたが、離婚後の養育についてノルウェーに学ぶところが多いと考え、子どもの養育や家族の暮らしを実際に確かめたかったのです。

青木さん(以下、敬称略):3日間の滞在でしたが非常に有意義な時間を過ごすことができました。現地の日本語補習校にはじまり、子育て中のお母様、離婚経験をお持ちの方々にインタビューしたのに加えて、「ブフェタット(Bufetat):ノルウェー子ども青少年家族局」という公的機関を訪れました。これは離婚を決めた両親が離婚後の子育てについてコンサルティングを受ける場所で、離婚が正式に決まるまでに少なくとも1回は訪れる必要があります。夫婦間の話し合いがまとまらない場合は7回まで無料とか。日本にはない、ユニークな制度ですね。

野口:離婚後の子育てに関するノルウェー政府のケアは手厚く、面会や養育費の取り決め、子どもへの手当てが法的に定められていることから、離婚した両親が子どもを共同養育しているケースも見受けられます。そうした子どもに対しては年間4万クローネの免税制度を準備するなど、子どもの養育をめぐる環境、特に経済面でのサポートも充実しています。

青木:お話を伺った2組の元夫婦は、月の1週目は父親、2週目は母親といった「交代制」をとっていました。離婚後も夫婦が立場を同じくして子育てに取り組んでいるのを間近に見て、いい意味で衝撃を受けました。

──日本の子育てにおいては考えられないということですか?

青木:日本には「単独親権制度」というルールがあります。離婚後は父親または母親のいずれかが親権を持つため、子どもにとって「(非同居親に)会いたくても会えない。会えても月に数回・数時間」という状況が続くわけです。一方、ノルウェーでは子どもの意思を7歳から正式のものとして認めます。子どもを中心に据えるという考え方が根付いているのでしょう。

野口:DVや虐待の問題がありますので、難しい部分もたしかにあります。しかしブフェタットのように、離婚する夫婦が子どものことを話し合う機会を“行政が強制的に用意する”のは、子どもにとって救いになると私は考えています。日本の離婚届には「養育費や離婚後の面会について話し合いましたか?」というチェック項目はありますが、実際にチェックする人は全体の50%、実際に実行しているのは20%ほどと言われています。だからこそ「離婚した後も親と子どもが会える権利」を、法律で守っているノルウェーの制度は素晴らしいと思います。

──たとえ親同士が離婚したとしても、定期的に会うことは子どもが成長していく上で重要なファクターだと思います。

野口:まさにそのとおりです。子どもの人権や男女の平等を法的に定めなければならないいまこそ、ブフェタットのような公的機関を日本に増やしていきたいですね。日本にも改善の余地はまだまだあります。

青木:今回、私たちがノルウェーを訪問した目的は、ノルウェーの現状をリポートすることで、親が離婚した日本の子どもたちの養育環境について前向きな提言を続けていくためです。より具体的な支援方法や離婚後に再婚した場合のケースなど、さらに調査したいことが今回の訪問で見つかったので、夏にはノルウェーを再訪するつもりでいます。

野口:親の離婚を経験しても、子どもたちが安心して暮らしている好例がノルウェーにはたくさんあります。生活に根付いたリアルな取り組みを日本にフィードバックするために、今後も引き続きノルウェーのライフスタイルをキャッチアップしていきたいですね。