写真家 宇佐見健さんに聞く、ノルウェーオーロラの魅力

2017年04月04日

大自然やオーロラの撮影でノルウェーを訪れること10数回──写真家の宇佐見健さんに、ノルウェーオーロラとの出会いを振り返っていただきつつ、ノルウェーという国やそこに暮らす人々の魅力を伺いました。

 

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──ノルウェーのオーロラを撮るようになったきっかけを教えてください。

 

2011年11月に政府観光局のプレスツアーに参加させてもらい、カメラ雑誌に掲載する新機種カメラの録り下ろしとレビューをするためにノルウェーを初めて訪れました。そのときはロフォーテン諸島やスピッツベルゲンまで行ったのですが、納得のいく1枚が撮れないままタイムアップ。その年の冬が記録的な暖冬だったなどの不運もあって、なかなか再アタックできませんでした。

 

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次に渡航できたのは4カ月後の2012年3月。トロムソ近郊に滞在してオーロラハンティングツアーに参加したり、トロムソからキルケネスまでフッティルーテンで移動しながら船の上からチャンスを狙うなどして、手ごたえを感じたオーロラ写真を撮影することができました。このときの滞在で、オーロラはもちろんですがノルウェーのダイナミックな自然に魅了されましたね。以来、これまでに計11回ノルウェーを訪れています。

 

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▲沿岸船フッティルーテンのデッキから撮影

 

──被写体としてのオーロラの魅力は?

 

一つとして同じきらめきがないこと、ですね。ふっと目を離したすきに、姿や雰囲気を自在に変えるオーロラの一瞬を切り取ることができるのは写真家冥利に尽きます。また、「ノルウェーのオーロラ」に限定していえば、暮らしの中に寄り添っているように思えます。

 

──生活の中にオーロラが根づいている?

 

他の国のオーロラ写真を見ると、荒野や山の稜線、森の木々の上にオーロラがかかっていることが多いと思います。一方、ノルウェーの場合、街の灯りや色とりどりの家の屋根など、オーロラと生活がとても密接な気がします。

 

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撮る立場からすると、家の明かりとオーロラを1枚の写真におさめるのはとても難易度が高いのですが、それだけに撮りがいもありますよ。街でも山でも船の上からでも、いろいろな場所でオーロラを堪能できるのはノルウェーならではだと思います。毎回違った顔を見せてくれる、そして違ったアプローチのできるノルウェーのオーロラに、おそらく「飽きる」ことはないだろうと感じています。

 

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──ぜひ多くの人にノルウェーのオーロラを体験してほしいですね。

 

写真家が言うのも変ですが、オーロラを見る機会があればまずは肉眼で堪能してください。いざオーロラを前にしてカメラを構えると、ちゃんと撮れるか心配になったり、オーロラ以外のことに意識が飛んでしまいがち。せっかくの機会ですからね、まずはその瞬間をじっくり味わってほしいです。

 

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▲宇佐見健さん撮影のオーロラのスライドショー

 

──宇佐見さんがノルウェーを訪れるのは、オーロラの撮影のためだけではないと伺いました。

 

何度か渡航するうちに、その国民性にも魅了されてしまい、オーロラだけではなく「人」を対象にした撮影ができないかと考えていました。そんなとき、2013年がノルウェー人画家ムンクの生誕150周年だということを知ってひらめいたのです。ノルウェーで出会った人たちにムンクの「叫び」ポーズをやってもらい、その表情をiPadに表示して真顔とともに写真に撮らせてもらったら面白いじゃないかと。

 

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──実際にやってみるといかがでしたか?

 

恥ずかしがる方もいましたが、ほとんどの方が喜んで被写体になってくれました。一人ひとり「叫び」のやり方が違うのがユニークでしたし、OKでもNGでも、そこでコミュニケーションが生まれるのもうれしかったです。

 

しかも撮ってあげると「欲しい」ということになりますよね。メールで送るのは簡単ですが、それじゃ味気ないと思ったので、次にノルウェーに行ったときにプリントした写真を直接届けるようにしたんです。

 

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──2014年1月には写真展「Norway photo journey ─ 風景とムンクな肖像」を開催されました。

 

ノルウェーの自然や牧歌的な風景写真と、各地で撮影した「叫び」ポートレートを展示させてもらいました。下の「叫び」は、そのポートレートを約1万枚使い、モザイクのように並べて作ったんですよ。

 

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▲「ムンクな肖像」ダイジェスト動画

 

ノルウェーで撮影するときは、通りすがりの方に声をかけてではなく、キオスクの店員さんやホテルのレセプションなど“いつもそこにいるはずの人”にお願いしました。再び訪ねていくと、「また来たか」と歓迎してくれたり、目当ての人がいなくても「写真を渡しておくよ。だから……僕のことも撮ってくれない?」といったように、旅を通じてノルウェーの人々にぐっと近づけたのが何よりうれしいですね。ノルウェーのオーロラとそこに暮らす人をテーマに、これからも多くの作品を撮っていければと考えています。

 

 

写真家 宇佐見健

日大芸術学部写真学科卒業後、雑誌出版社~広告代理店を経て独立。人物、風景、広告、ネイチャー、水中などマルチな被写体と撮影フィールドで活動。カメラ雑誌へは新製品レビュー、How toや特集記事などを執筆中。近年は北欧ノルウェーで風景や人物撮影を精力的に行う。カメラグランプリ選考委員。

https://www.facebook.com/ken.usami.52