石、木、そして氷……自然素材の楽器を奏でる「東京の音」プロジェクトが始動

2018年04月20日

「東京の音」と聞いて、どんなイメージが浮かびますか? 自動車のクラクション、街の喧騒、ビル風の吹き抜け音──実は東京都の約7割は森林です。山があり、川があり、海には島が浮かんでいます。そんな自然豊かな東京で見つけたさまざまな素材を楽器にして演奏する「東京の音」プロジェクトの第1弾企画として、ノルウェーのパーカッショニスト、テリエ・イースングセットさんが2018年2月に来日。奥多摩の湧水を凍らせて作った《氷の楽器》によるコンサートが開かれました。

 

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氷の楽器を操るテリエ・イースングセットさんが来日

 

木・石・金属など、さまざまな素材を楽器として演奏する世界的パーカッショニスト、テリエ・イースングセットさん。なかでも氷の楽器を演奏するアイス・ミュージックに関しては、2017年12月のノーベル賞授賞式で演奏するなど第一人者として知られています。

 

Emile Holba

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ノルウェー西部の港町、ベルゲン出身のイースングセットさんがアイス・ミュージックに取り組み始めたのは、1999年にノルウェーのリレハンメルで開催された冬季オリンピックがきっかけ。オリンピック委員会から「凍った滝でコンサートをするための作品制作」を依頼され、氷のチャイムを作ったのが最初だったそうです。

 

そこから本格的なアイス・ミュージックの追求が始まりました。ドラム、トランペット、ホルン、ハープ、ノルウェーの民族楽器ランゲレイクなども氷で制作し、演奏をしています。

 

「音色や残響は素材によって異なります。すぐに音が静まってしまうものがあれば、永遠に続くのではと思うほど長く、遠くまで響くものもあります。とても繊細でそれぞれに個性があるのが魅力ですね」

 

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■Terje Isungset テリエ・イースングセット

1964 年、ノルウェー・ベルゲン出身。世界で活躍し続けるパーカッショニスト。最先端ジャズの名手として、ソロ演奏やさまざまなジャズアーティストと共演を行なっている。1980年代より、木・石・金属などの自然素材をそのままの形で演奏。詩的で簡潔な音作りはとてもユニークで、特に氷に関してはすべての楽器を手作りして演奏するなど、アイス・ミュージックプレイヤーとしても高く評価されている。

 

 

氷の楽器のステージは、一期一会の“自然との調和”

 

そんなイースングセットさんの東京公演が、2018年2月19日(月)、20日(火)に東京・大田区の大田区民ホールアプリコとギャラリー南製作所で開かれました。東京で「氷の楽器」が奏でられるのは初めてのことです。

 

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今回の公演では、東京を代表する銘酒「澤乃井」の小澤酒造から日本酒の仕込み水500Lをご提供いただき、マイナス18度までゆっくり冷却して作った氷柱を削ってイースングセットさん自らが楽器を仕上げていきました。

 

氷の楽器には「ミネラル分の多い自然水が適している」そうで、ノルウェーでは氷河や湖の氷を切り出して楽器づくりをするとか。東京の酒蔵で日本酒づくりに使われている水を氷にして楽器を作るとは、まさに《東京の音》ですね。

 

今回使われた楽器は、チャイムやドラム、ホルンなど実に多彩。深みのある澄んだ音色に皆さん聞き入っていました。

 

アイス・ミュージックに彩りを添えるのは、マリア・スクラネスさんの歌声です。

 

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■Maria Skranes マリア・スクラネス

1987年ノルウェー・トロンハイム生まれ。ヴォーカリスト、作曲家。2014年、ベルゲンのグリーグ音楽院とオスロのノルウェー音楽院で、ジャズ、インプロヴィゼーション音楽、エレクトロ二クスで学士号を取得。エレクトロニック・ポップ・デュオ「Machine Birds」やソロプロジェクト「MAARIA」でも活動中。

 

 

楽器はすべて氷でできているため、マウスピースなど口に直接触れるものはどんどん溶けていきます。会場の空調を一定に保っても、演奏しているうちにチューニングが変わってしまうこともしばしば。

 

「アイス・ミュージックの音色はまさに一期一会。その瞬間だけに訪れる、自然との調和によって音色が決まります。刻々と表情を変える音色の変化も楽しんでもらえたらうれしいですね」

 

※今回のコンサートの模様ではありません。

 

自然から紡ぎだされる悠久の音色を東京で堪能

 

コンサートに先がけ、来日直後に羽田空港国際線旅客ターミナル江戸舞台で、「東京の音」プロジェクトの記者発表会とミニコンサートが開かれました。

 

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「東京の音」(The Sounds of Tokyo)とは、「東京独自の音を探し、創り、奏でる」というテーマを掲げ、新しい東京の魅力を世界に向けて発信するプロジェクトです。イースングセットさんが東京で集めた素材をもとに楽器を作り、演奏し、都心部や多摩地区、島しょ部に暮らす人たちとの関わりを深めていきます。

 

「素材自体が内包している魂のようなものを導き出すのが私の役目。削ったり、磨いたり、何日もかけて対話をすることで、人と自然と音の理解を深めていきます」

 

当日は、神津島、八丈島の石や木、羽田空港がある大田区内の工場部品や、イースングセットさんがノルウェーから持参したご両親が住む家の石、ヤギのツノなどでパフォーマンスをしました。

 

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ノルウェーから持ってきた石は、ご実家の裏山を歩いていたときにつまづいて拾い上げたものだとか。「石に選ばれた気がします。そしてまた彼も日本に来たかったのかも」と笑うイースングセットさん。すべてにヒストリーがあります。

 

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「今回で15回目の来日ですが、いつもたくさんの驚きをもらいます。音楽、自然、人、伝統……。それらすべてが《東京の音》として一つに結ばれるのだと思うと、いまからワクワクが止まりません」

 

2018年5月には八丈島で、8月、9月にも都内でコンサートをする予定です。2年後に迫った2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、いまの《東京の音》を探す旅が始まりました。

 

 

関連サイト

 

▼「東京の音」公式サイト

http://www.tokyosounds.jp